Art as a Haven of Happiness 「楽園としての芸術」展

スペシャルインタビュー【special interview】

芸術の醍醐味とは、
つくり手にも鑑賞者にも「特別な経験」が与えられること。
国内外で活躍中する、クリエーターの方々が語る、「楽園展」の魅力をご紹介します。

イラストレーター 大橋 歩(おおはし あゆみ)

“これこそ純粋なアート”

『平凡パンチ』の表紙で有名な大橋歩さんは、企画から取材、写真撮影、編集までのすべてを自身ひとりで手がけ話題となった季刊誌『Arne』の進化系として、現在、雑誌『大人のおしゃれ』を刊行され、生活の中にある身近で素敵なものを紹介されています。最新号『大人のおしゃれ9 春と夏’14』の特集「おしゃれなイワタトシ子さんの大人ならではのコーディネート」で登場した「しょうぶ学園」の刺繍シャツは、「ちくちく縫った刺繍は花でも動物でもなく、それなのに心惹かれる絵」と、とてもお気に入り。

[プロフィール]
1940年三重県生まれ。多摩美術大学油絵科卒。64年『平凡パンチ』(マガジンハウス)の創刊号から7年半表紙の絵を担当。以後、広告、雑誌などの仕事をする。2002年に季刊誌『Arne』を創刊。2010年秋から大人の洋服「a.」を製造・販売。主な著書に『日々が大切』(集英社)、『もののお買物』(サンクチュアリ出版)、『大人のおしゃれ9』(アルネBooks)など。

── 大橋さんは鹿児島の「しょうぶ学園」に行かれたそうですが、
どのようなきっかけだったのですか?
また、実際に行ってみてどのような印象をおもちになりましたか?
「しょうぶ学園」には知人のイワタトシ子さんから誘っていただいて、昨年初めて伺いました。まず驚いたのが、施設長の福森さんの利用者の皆さんに対する接し方が、私が想像していた園長さんと利用者さんという感じではなく、結構ぶっきらぼうだったことです。でも、それは例えば身内愛だと思いました。あたたかかった。
学園の中は、とてもセンスがよくておしゃれで、すごく好きでした。学園をつくっていらっしゃる方たちの感性でしょうね。施設の中に入って行きやすかったです。好きって思ったら入って行きたいじゃないですか。感激の一日でした。伺えて本当によかったと思っています。
©Shobu Gakuen
── 実際に作品を作っている場所もご覧になったと伺いましたが、
どのようなことをお感じになりましたか?
昨年伺った時に、作品を作っているところをいろいろ拝見しましたが、職員が必ずお手伝いしていました。そうでなければ、刺繍などはいいところで形として残らないんですね。
利用者はものを作ろうとしているわけではなくて、どんどん刺していこうとしています。職員が利用者とどのようにかかわりをもつか。利用者がつくったもので、全員よい評価を得ることはなかなか難しいと思います。職員がかかわっていくことがいいことだと思いました。
野間口桂介 (しょうぶ学園) 無題
2005年 ミクストメディア、綿シャツ
©Shobu Gakuen
── 「しょうぶ学園」にお礼のお手紙を出されたそうですね。
よろしければご披露いただけますか?
少し恥ずかしいのですが・・・。
「ありがとうございました。いろいろいろいろありがとうございました。福森様たちがやっていらっしゃること、私には感激の正しいことでした。私は正しいことが好きです。でも私の生きてきた世界では、正しいことが通らないことも多かった。いつのまにか、私もいいかげんな人間になっていたと思います。しょうぶ学園に伺って、福森様たちのお話で体中が声を上げました。それにしても、そちらに伺った私の目的を恥じました。イワタさんの素敵なブラウスを見て、ぜひうちのショップで展示販売をさせていただきたいと伺ったのですから。でもたくさんお話を伺って、改めてうちでもさせていただきたいと思いました。どうぞよろしくお願いします。私にはすごい二日間でした。」
©Shobu Gakuen
── イラスト、版画、コラム、エッセイなどクリエイティブな作品をたくさん生み出されている大橋さんからご覧になって、「しょうぶ学園」の作品にはどんな魅力をお感じになりますか?
私は習って絵を描いてきました。習わないと絵は描けないと思ってきました。基本的に健常者といわれる我々は、何を描いていいのかわからないところから始まりますが、彼らは紙と鉛筆があればすぐに描けます。自分たちはどういう者であるかを、私自身考えさせられました。私の場合、実は絵が上手じゃないので、人に評価してもらって、これでいいのかな?と思ってやってきました。
今回、彼らが描いたものを見せてもらって、とてもわくわくしました。上手いとか上手くないとかいうのではなく、もっと強い、なんていうか地球の中のマグマのような、生命の勢いのようなものと思いました。すごいと思いました。“これこそ純粋なアート”だと思います。
── 今回の展覧会や来館者にメッセージをいただけますか?
展覧会では是非作品をそのまま見せていただきたいですね。そして見る方それぞれの見方が大事です。好き嫌いでいいと思います。
  • デザイナー 吉岡徳仁 TOKUJIN  YOSHIOKA
  • イラストレーター 大橋 歩 AYUMI OHASHI
  • ファッションデザイナー 皆川 明 AKIRA MINAGAWA