Art as a Haven of Happiness 「楽園としての芸術」展

スペシャルインタビュー【special interview】

芸術の醍醐味とは、
つくり手にも鑑賞者にも「特別な経験」が与えられること。
国内外で活躍中する、クリエーターの方々が語る、「楽園展」の魅力をご紹介します。

デザイナー 吉岡徳仁(TOKUJIN YOSHIOKA)

突き抜けた才能とエネルギーの強さから生まれる
“新たな表現”の制作プロセスをこの目で見たい

東京を拠点に、世界中にデザインを発信し続けるデザイナーの吉岡徳仁さん。デザインからアート、建築まで数多くのプロジェクトを手掛けられています。世界で最も活躍するデザイナーとして数々の賞も受賞されています。イタリアで開催されるミラノサローネ(世界最大規模の国際家具見本市)で毎年、新作を多数発表し続けています。そのミラノサローネの会場では、本展覧会に出品するアトリエ・エレマン・プレザンとの出会いがありました。

デザイナー 吉岡徳仁(TOKUJIN YOSHIOKA)

[プロフィール]
2000年吉岡徳仁デザイン事務所を設立。デザインからアート、建築まで、幅広い領域において、実験的で革新的なクリエーションは国内外で高く評価され、その作品はデザインの領域を超え、アートとしても世界で高く評価されている。数々の作品は、ニューヨーク近代美術館やポンピドゥーセンター等の世界の主要美術館で永久所蔵されている。世界のデザイン賞を多数受賞。アメリカNewsweek誌日本版による「世界が尊敬する日本人100人」にも選出されている。

真似ができない色づかいから感じる
つくり手の純粋さ

── デザインの本質とその概念をゆさぶり続けるような作品を発表している吉岡さんですが、つくり手として、アトリエ・エレマン・プレザンの作品をご覧になって興味深い点は?
アトリエ・エレマン・プレザンの数々の作品には、日本文化からかけ離れた、想像のつかないバランスが存在しています。例えば、色づかいです。通常、人はモノをつくる中で、どうしても計算してしまうものです。
ところがアトリエで偶然に生み出されるという作品のような色づかいは、これまでに見たことがありません。
── 吉岡さんのデザインでは、色に対するこだわりはないと伺ったことがありますが…
人工的な色には興味はありませんが、自然に生まれた色は好きです。例えば木の色や、葉っぱの色など自然の中に存在する色です。
アトリエ・エレマン・プレザンの作品は、自然に体の中からあふれてくる、決して真似ができない色づかいだと思います。その色づかいに憧れるとともにつくり手の純粋さを感じます。

安澤美理(アトリエ・エレマン・プレザン)《もようとカラフル》 2011年 ©Atelier Elément Présent

安澤美理(アトリエ・エレマン・プレザン)
《もようとカラフル》 2011年
©Atelier Elément Présent

エネルギーの力強さから生み出される
“新たな表現”の数々

── 彼らは、まるで息をするように作品を生み出し、
豊かな感性と知性の発露を感じさせる造形作品が日々生み出されています。
制作の際、高い集中力、そして緊張感の中で大胆なものが出来上がってきているようです。それは偶然のようで、感覚的な動きによって全体の空気を捉えながら、エネルギーを作り出しているように見えます。そのエネルギーの強さがとても印象的で、その力強さが“新しい表現”を生み出していると思います。
私は高校生の頃、30分ほどの道を歩いて通学していました。恵まれた自然を感じると同時に、道沿いで目にする工場の高度なテクノロジーにも憧れを抱いていました。その時に目にしたものが、今の作品につながっているのかもしれません。
そのような経験から、幼少の時に見た風景は作品に影響をおよぼすのではないかと思います。特に立体作品を見ると、過去の記憶と新しい記憶の中で編集し直しながらつくられていく──、立体を通してエネルギーをビジュアル化しているような作品が見られます。

倉俣晴子(アトリエ・エレマン・プレザン)《マンション》 2007年 ©Atelier Elément Présent

倉俣晴子(アトリエ・エレマン・プレザン)
《マンション》 2007年 ©Atelier Elément Présent

実験的な要素+見る人に問いかける展覧会

── 本展覧会では、絵画のほか、立体作品など、100点近い作品が展示されます。
制作風景も不定期で公開する予定です。展覧会に期待することは?
自由さとともに、ひとつの価値観を生み出すような展覧会にしてほしいと思います。作品のつくり手たちが、この展覧会をきっかけに次の新しいものを作ろうと思うような展覧会になるといいですね。
何か突き抜けた才能を見てみたい人もたくさんいると思います。私自身は、どれがデザインでどれがアートというように分ける必要性をあまり感じていません。これまで見たことのない色づかいや、見たことのない強さなどを感じることができる──、それを最大限に活かして、デザインやファッションなどの分野の方に限らず、年齢にも関係なく、幅広い層の方に見ていただけるような展覧会を期待します。
作品を見て気になっていたのは、絵画作品の描き方の順番です。会場で制作風景が見られるのは素晴らしい企画です。
私も制作風景をこの目で、ぜひ、見たいです。全体から描くのか、部分から描くのか、どうやって色を重ねるのか。とても興味があるところです。

制作の様子 ©Atelier Elément Présent

制作の様子 ©Atelier Elément Présent
── 最後に、来館者へのメッセージをお願いします。
作品には純粋さがとてもストレートに表現されています。
ただ美しいだけではなく、何か心に響くものが一つあると、そこが鑑賞するときのおもしろさにもつながるものです。「楽園としての芸術」展に展示される作品は、その一つひとつに見る方にとって、心に突き刺さるものがあると思います。
人間はすべてを理解すると魅力を感じなくなってしまうものです。理解を越える何かがあると、興味を持つと思います。作品の数々は、“新たな表現”と言えるのではないでしょうか。実験的であり、人に問いかける要素もある、そんな展覧会だと思います。

下川智美(しょうぶ学園)無題2014年 ©Shobu Gakuen

下川智美(しょうぶ学園)無題2014年
©Shobu Gakuen
  • デザイナー 吉岡徳仁 TOKUJIN  YOSHIOKA
  • イラストレーター 大橋 歩 AYUMI OHASHI
  • ファッションデザイナー 皆川 明 AKIRA MINAGAWA